介護職場の定着促進、研修増やすより賃金増やすことが必要。予算議会の審査から。
介護人材定着促進事業費というのが、2015年の福祉部の予算で126万8千円計上される案について、質疑を交わした。これは説明資料によると「市内の特別養護老人ホーム、老人保健施設の中堅職員を対象に研修を行い、人材を育成する。」というもの。
OJTリーダー養成研修やコミュニケーション研修、OJTリーダーフォローアップ研修のメニューがある。OJTとはオン・ザ・ジョブ・トレーニングのことで、「実際の職場で業務をどんどん教え早く仕事に慣れる」研修のことだそうだ。介護の現場では、職員が定着するために、言葉を変えれば、辞めないようにこういう事業おこなう。
井坂しんや議員が代表質問で市長とやりとりした際に使った資料を私も福祉部とのやりとりで使った。介護従事者アンケートで、昨年の1月に市内介護事業所に正規職員として就業中の756人を対象に60.8%の460人から回答を得たものだ。
やりがいを感じることは?という設問に1番は利用者や家族から感謝されること。2番は利用者とのコミュニケーションがスムーズにはかられることとなっている。就業していて感じる悩みは?という設問には1番が仕事の割に賃金が低い。2番は精神的に負担が大きいとなっている。そして今回の「定着」ということに関連した設問で、介護の業界で離職する人が多いのは、主にどのような原因だと思うか?という設問に圧倒的に1番は仕事のわりに賃金が低いという前述の就業していての悩みと同じだった。ちなみに2番は職場の人間関係だった。
つまり、「定着促進」といってさまざまな研修メニューを行っているのだけれど、一番改善されなければならないのは、介護従事者の賃金をもっと上げること、これに本来手当をしなければならないということだ。自由意見欄には「賃金の低さは不安として大きい。家族を養っていくことを考えると離職も考えたことがある。」「現在の賃金水準では夫婦共働きでないと生活できません。高齢者を支えるために必要な介護者を大事にしなければ、離職は止まらないと思います。」と記されている。全く切実で、こういう状況を放置している国の介護政策について、憤りを禁じ得ない。
私は今までの人生において、誰かの介護をしたという体験がない。両親はもう2人とも死んでしまっているし、夫の両親もいないので、おそらく今後の人生においても身近な人の介護を行うということはないのだろうと思う。(人のお世話をするというより、自分がお世話になるほうが現実的かもしれない。)つまり、制度やしくみを人から聞いたり本で読んだりして知ってはいても、実際にどれほどの苦労を現場の方々がしているのかという点については、かいもく想像するしかなく、あるいはこれも本で読むか人から話を聴くか程度のことなのだ。
介護という分野がまだ、この20年、長くても30年くらいの歴史しかなく、職業としてもそれほど認知されていず、なおかつ重要な仕事であるにもかかわらず、社会的に重視されていないということがある。昔は三世代で住んでいて、高齢者を家で看るというのが慣例だった。ところが核家族が増え、夫婦共働きとなり、デイサービスやショートステイという施設に入る前に、社会的に介護の必要な方々を受け止めるしくみが作られた。それはそれで良かったのだけれど、それも不十分で、そこで働く人々の賃金や待遇が前近代的だ。
書いていて、学童保育やそこで働く指導員とも少し似ているなと思った。民間の保育園の保育士や病院の看護助手(ナースエイド)もそうではないか。どうして、こうも子どもや病人、高齢者に接する大事な職種なのに賃金が低いのだろうか。そうそう、非正規の教職員の賃金の低さについても聞いたことがある。
予算審査の事業費が発端ではあったが、介護の職場の職員へ研修などの「小手先」のものへいくらばかりかの予算計上をしても、抜本的な部分にメスを入れなければ、変わらないということだ。でも、これを担当課に言っても仕方ない。国の政策に問題があるわけで、私は研修が無意味だなんて言っているのではない。あくまでも国の高齢者への政策問題であり、介護の職場の労働問題であり、もっと大きくは社会保障全体の問題なのだと思う。
「大砲かバターか」という言葉が示すとおり、安倍政権になって毎年防衛費が増えている一方で社会保障費が削られてるわけで、ここが一番の問題だ。あぁ、それにしても日本の貧弱な社会保障制度と教育制度もそうだけど、労働者のひどい働き方も、耐えるに限界を感じる。
主体的に反省するところは、今年度はせっかく教育福祉常任委員になったのに、福祉や教育の現場視察を独自に行ってこなかったなということ。学童クラブ2か所へは行ったけれど、それだけだった。改選後、必ずや議会へ戻り、やり残した現場視察、現場のみなさんの声を伺うということを謙虚な気持ちでおこないたい。
横須賀中央Yデッキでいつも演奏しているおじさんの頭にハトが・・・・。