大村洋子
大村洋子大村洋子

「教育の環境整備の推進」という名の「小学校の統廃合」

この間、横須賀市は田浦、長浦の小学校区、走水、馬堀の小学校区、この2つの地域の小学校のあり方について審議会を立ち上げ諮問し2022年5月から議論を開始した。審議会はそれぞれの地域での協議会でさらに地域に根差した意見を集約してきた。

私は走水、馬堀の小学校区の協議会に3度ほど、全体の審議会にも2度ほど傍聴をしてきた。

横須賀市教育委員会はこの案件を「教育の環境整備の推進」という観点で捉えてきた。そのとおりだと思う。しかし、平たく言えば、小学校の統廃合問題である。これは大きな枠組みで言えば市が進めている、もっと言えば国が進めている「公共施設の統廃合」の大きな流れに即した具体的な横須賀市における流れなのである。

吉田市政の時には「施設配置の適正化計画」と言い、上地市政になってからは「FM戦略プラン」と呼ばれている公共施設の統廃合問題である。施設は物理的に老朽化するし、利用者も人口減少に伴い減っていく、今までどおりの施設管理を無計画に行っていたのでは、時間もお金も労力もかかっていく、だからこの際、しっかりと先を見据えて計画をしていきましょうというのが趣旨である。

昨日の教育委員会定例会では、この間の協議会、審議会の状況と答申の中身が報告された。そして、今朝の新聞報道にもあるように田浦小学校区を長浦小学校区に編入、走水小学校区を馬堀小学校区に編入する、これらの方策が妥当であるという答申が出された。

今後は各学校区で3回ずつの説明会が開かれ、その中で答申の「付言」にもあるように「児童が円滑に新たな環境で学べるようにすることや通学の安全を確保する方策を講じる必要」について要望が取りまとめられていく格好になるのだろうと推察される。「付言」ではさらに「全市的な遠距離通学に対する方策の検討が必要であることを申し添えます」とある。全市を捉えての付言であることから、今後、横須賀市の児童・生徒の通学について今までにないような方策がとられていくことが予見される。

人口密集地、首都圏などでは小学校区は就学年齢に達した6歳児が歩いて通学できる距離や安全性が暗黙知としてあるのではないか。だから、どうしても走水小学校区のこどもたちが馬堀小学校まで歩けるだろうかとか、田浦小学校区のこどもたちはトンネルをいくつも超えて長浦小学校区まで通えるだろうかと心配してしまう。私自身や息子の通学を振り返ってみてもそれほど長距離を通ったわけではないので、小学生がバスや電車で学校に通う、あるいは森の中や雪山を長時間歩いたり離島から舟に乗って学校に通うといったことをなかなか想像できない。世界を見渡せばおそらくもっと稀有な状況もあるのだろう。そうなるとこどもを教育させるということがどういうことなのか、教育委員会が言う「教育の環境整備」とは一体何なのか、おおもとのところを掘り下げることも必要だ。憲法第26条の教育を受ける権利と受けさせる義務、おおもとにはこれが横たわっている。

教育委員会の施設は特に学校に関する施設は「FM戦略プラン」の文脈を第一義に考えていく問題ではない。その問題の立て方は間違っていると思う。合意形成の中でももっとも丁寧に緻密に時間をかけてやっていくことが必要だと思う。

たたら浜 走水小学校は
水泳授業を海でおこなっているという