大村洋子
大村洋子大村洋子

女性蔑視の上地発言を考察する⑩

こんなに長く一つのテーマをシリーズで書くとは思っていなかった。もはや、上地発言分析と言うよりは、私自身の頭の整理作業と化している。今回はまず、生物学的な観点からのアプローチだ。

生物の世界では性別は
固定概念ではないようだ

ミュージシャンの坂田明さん=「ミジンコ博士」の「学説」を読んだときに、ミジンコってすごい!と思ったことがある。今、手元にその本がないので、記憶だけで書き出すと、ミジンコは環境によって「メス」と「オス」がいたり「雌雄同体」になったりする。この現実だけでも驚くが、魚には子どもの時と大人になってからとで性別が変わる種類があるし、ワニなどは外気温によってメスの卵になる場合とオスの卵になる場合があるそうだ。こういう、生物の状況を考えると性別というのは固定して考えない方が良いのかもしれないと思う。これは人間にも言えることで、身体の性と心の性が違っていたり、好きになる対象が同性である場合もあるし、年齢によって変化する場合もある。そして、今はそういうことが社会的に認知され、公表し、受け止められる時代になってきたといえる。

女は男の添え物なんだな・・・って
こどもの頃は思っていた

私がこどもの頃は「ウーマン・リブ」の潮流があり、その中で「中P連」というグループがよくマスコミに取り上げられていた。今から考えると女権拡張一辺倒で、近視眼的な運動だったのではないかと思う。そう考えると上地氏がいうような「虐げられた歴史」ばかりが女性の歴史ではないということだ。比較的最近の昭和時代にあっても大暴れして一石投じた女性たちもいたということだ。私はこういうことをこどもの時に見聞きしてきて、「あぁ、女に生まれて損をした」と思い続けてきた。女は男の添え物なんだなと思ってきた。

「腰やおしりを冷やしてはいけないよ」と母によく言われたっけ

話を戻して、性差はあるのかということをもう少し考えたい。私は肉体的な差はもちろんあると思う。身体の大きさが違う。女性の方が大きい民族や人種ってあるのだろうか。聞いたことがない。ほとんど、女性の方が男性よりも小柄だ。大きな女性、小さな男性はいるが、総じて女性の方が男性より小柄だと思う。女性はこどもを産むための身体を持っている。子宮があるので比して骨盤が男性より大きい。私は母に「腰やおしりを冷やしてはいけないよ」とこどもの頃に何度も言われた。女は将来こどもを産む、だからこどもの頃から自分の身体をいたわれ、母はそう言っているとこども心に思ったものだ。程度の差はあれ、多くの女性はそのようにこどもの頃から育てられてきたのではないか。私には娘はいないが、もし娘がいれば私もそのように言ったかもしれない。しかし、こどもを産むか産まないかはもはや親が介入することではない。本人は決めることだ。あぁ、そういえば、「女性は子を産む機械」と発言した政治家もいたっけ。

「女は馬鹿な方が良い」という社会に蔓延する悪罵を払拭せよ

頭脳の差はどうか。「女は馬鹿な方が可愛い」なる風潮が昔は大手を振ってまかり通っていた。優秀な女性はほんの一握りで「キャリアウーマン」などと呼ばれていた。その女性ですら湖面の白鳥のように見た目は優雅だが、水中では必死に水を掻いていて家事と育児と仕事を1人で背負っていた。夫は「手伝う」とか「協力」の体でしか関わろうとはしない。そういう限界が社会に蔓延していた。していたと過去形ではなく、今もそうだと思う。

2018年8月日本医科大学が女子の受験者に対して一律減点していたことが発覚し社会問題に。意図的に女子の合格者を抑えていたとして、明らかな女性差別として大問題になった。その後、少なくとも10大学が同じように得点操作をしていたことが判明。「女性は結婚や出産で職場を離れることがあり、人手が足りなくなるから」との関係者の声があったというから、これが本音なんだろう。結婚や出産で職場を離れてもまた、復帰もできる体制をつくることこそ必要ではないかと思うが、そういう発想をしないところが、日本のジェンダーギャップ指数がいつまでも体たらくな状況のゆえんなんだろう。まったく、情けないじゃないか。2021年度医学部の女子の合格率が男子の合格率をはじめて上回った。そして22年には再び男子が逆転した。つまり得点操作など意図的に持ち込まなければ、女子も男子も同じように合格するということではないか。つまり、頭脳の差というものは、もともとないのではないかということだ。

ここまで、極めて個人的にまた、稚拙に生物学的観点と言って偉そうに考え事を書いてきた。つまり私は生物としての女性が差別をされる理由は全くないということを言いたいのだ。だから、上地市長が「DNA ミトコンドリア」と言った時にそれを持ち出すことはナンセンス(2度目の登場)なのだ。それを強調したい。この次は運命論的観点を考えたい。⑪に続く。