大村洋子
大村洋子大村洋子

民主主義の多様性と議員定数問題。横須賀市議会の場合。

先日、ある会議に参加した際に、市民のお一人から「横須賀市議会も定数は削減しなかったようだし・・・」という、つまり「削減して当たり前なのに、なぜ?」というようなニュアンスでの発言を聞いた。これは、よく世間で言われている“身を切る改革”というやつで、横須賀市議会はみずから身を切る改革をしていないじゃないかというご批判かな?と私は受け取ったわけだ。

「定数問題」はこの十数年、いや、もっと前からになるか、横須賀市議会の議会制度検討会でも必ず議題になってきた。なぜだろうか?定数とはその自治体の住民の数を考えて、このくらいの議員数が必要だという数。横須賀の場合は4年に1度の選挙の際に、ここ何度か減員となってきた。しかし、今回は現状維持、増減なしの41人となった。「定数問題」がここまでクローズアップされるのは、一つは「財政難」なのだから、議員の数を減らすべきだという考え。二つ目に、そもそも議員はきちんと仕事をしているのか。という議員への不信感。後者は政務活動費をめぐって、昨年さんざんマスコミを騒がせた内容。都議会のヤジ問題や兵庫県の「号泣議員」。

しかし、そもそも、議会費はそんなに財政を圧迫するほど大きいのだろうか。

先ごろ、出された予算案を参考に見ると、議会費は全体の歳出合計の0.7%だ。財政問題の側面から議員を減らすべきと考えるのは、あまり道理のあることではないと私は思う。しかし、後者の方は、政務活動費の不正な使い方と、議員としての不見識の問題であり、これは許されない。

私も2期目の4年間、議会制度検討会でこの問題については積極的に論議に加わってきた。議員定数問題は煎じ詰めていくと、民主主義の多様性に行きつくのではないかと考えるようになった。この問題は、「住民投票」の考え方とも相通ずるところがあるように思う。引き続き考えたい。

議会制度検討会は議員定数について以下のように判断根拠を示す文書を作成している。定数削減こそが今の流れという中で、横須賀市議会はこう考えるという、一種の矜恃を持って作成された。私はそう思っている。

 

議員定数についての判断根拠

議会は自治体の二元代表制のもと、その果たすべき役割と責任がますます重要度を増している。また、団体意思の形成過程においては民意を踏まえ、質の高い議論をすることはもちろん、社会通念上適切な効率性と経済性を併せ持たなければならない。

議会を構成する議員はその高い資質と自覚が求められ、多種多様な活動の中で市民からの意見を反映するに十分な機能を持ち、市長や行政の予算執行について高度な見識を発揮する義務がある。

議員定数は、従来地方自治法により上限が定められていたが、平成23年の地方自治法改正により、議会自らが決定できることとなった。
過去においては、議会が何をしているのか見えない、議会活動が住民に伝わらないなどの意見がある中で自治体の財政難等の理由により、全国的に議員定数の削減が行われており、本市議会も同様に定数削減や議会予算の見直し等を行ってきた。

一方、地方分権改革により自治体の業務は質、量ともに増えており、さらに本市は基地などを抱える特殊事情から、他の自治体と比較して多種多様な意見を広く聴く必要があるため、いたずらに定数削減をするべきではないという意見もあった。

議会制度検討会では、これらの意見を踏まえ、平成24年5月から議員定数の在り方について検討した結果、
一、地方議会は二元代表制の一翼として、間接民主主義の実現を果たすべき、その役割と責任がますます増大していること。
二、全国の人口40万人規模の中核都市の議員定数はおおむね40人台の定数となっており、本市議会の定数が特段多い状況ではないこと。
三、本市議会は平成22年に定めた議会基本条例に基づき、すべての会議を原則公開とし、本会議・委員会のインターネット中継や毎年議会報告会を実施し、さらに市議会だよりの発行回数を増やしており、多様な市民意見を反映した政策提案が求められている。これらのためには、現状程度の議員定数が必要であること。

以上3点の理由により、今後迎える深刻な人口減少・少子高齢化の時代に立ち向かうためにも40万人規模の自治体として、より多くの市民の声を聞き、二元代表制の一翼を担う議会としてその責務を果たすため、議員定数を現行通り41名とすべきと判断する。