大村洋子
大村洋子大村洋子

伝えたからといって、伝わったとは限らない

市議会議員になってもうすぐ15年。その前4年間は「浪人中」でその時期も合わせると20年近く生活相談を行っていることになる。生活相談で一番多いのは生活保護関連の相談だ。以前は圧倒的に「生活が苦しい、生活保護を取りたい」という生活保護申請のケースが多かった。しかし、最近はそれと同じくらい生活保護利用中の方の「担当者から○○と言われたが、納得できない」というものが増えた。

過日の方はこういうケースだった。

ご本人にはブログに書くことの承諾を得ている。

生活保護を利用し始めて3.4年となる方。担当のケースワーカーから「障害年金を取得できるかもしれないから手続きをしてください」と言われた。そこで、ご本人は言われるままに、手続きを進め、障害年金の受給権を獲得した。そして、そのまま、生活保護費と障害年金の両方を受け取り続けた。そのうち、担当者ケースワーカーから「両方受給していた期間の最低生活費を上回っていた分を返還してください」と言われた。ご本人は「自由に使ってよいと言われた。お金は使ってしまってもう手元にはほとんどない。」「こんなことならはじめから両方は受け取れないと言ってほしかった。こんなことならはじめから障害年金受給の手続きをしなければよかった。」と憤慨していた。

現在の担当ケースワーカーとスーパーバイザーとご本人と私と4人で1時間45分ほど話し合った。

こういうケースは今までにも何度もあった。言った、言わないの話になって双方とも釈然としない思いが残る。

 

生活保護制度はとても複雑だ。そして全く同じケースはない。1人暮らしか家族か、障害の有無、子どもの有無、就労しているか、年金はあるのか、通院しているのか等、世帯ごとに違う。

返還金が生じるというのは生活保護利用者にとっては暮らしのかかった問題であり、極論すれば生き死にの問題だ。

たとえ、言った、伝えたと言っても、それが本当に伝わったのか、納得を得られるまで胸にストンと落ちるような理解にまで至ったのか、そこが一番大事なところだ。

そして、機械ではない、ロボットではない、人間だ。人間だから感性もあり、時にはバイアスもある。

 

私もできるだけその人が納得できるように、その人に合わせてカスタマイズして話をするように心がけている。それでも、見放されるときがある。「こいつは結局つかえねぇな」と見放されるのは私なのである。

難しいなぁ。相談活動は本当に難しい。自分の「生きる」が常に試される。

お花さんたち1 (8)