大村洋子
大村洋子大村洋子

美術館の市長部局への移管を考える【1】

人の生きる時間が伸びたことによって、学ぶという行為が就学年齢に限ったことではなくなっている。「生涯学習」という言葉が使われるようになって久しいが、この言葉は就労年齢以降の言わばリタイアした年代の方々に向けられるきらいがあった。しかし、近年それが前倒しに広がり、就労年齢中をも含まれるようになったように感じる。

 そこで、自治体の公共施設である博物館、美術館、図書館に対して今まで以上に利用が奨励されるようになった。ここまではごく自然な流れだったと思う。しかし、違う文脈でこれら「社会教育施設」が教育委員会の手を離れて、市長部局の所管へと移管されるということが実際に起こった。横須賀市はこの4月1日から博物館と図書館は今まで通り教育委員会の所管だが、美術館だけが切り離されこととなる。

 私はこの状況に対して、懸念をもつ。その懸念がいったいどういうものなのか、単なる杞憂か、将来的に大きなダメージを食らうようなターニングポイントなのか、今のところまだよくわからない。わからないが、直感的にまずい気がする。いくつかの既にあるリスクやデメリットのパーツを組み合わせると良くない方向が必然的に見えてくる気がする。それを考えてみたい。

2020-3