障害年金支給の怪~努力して症状を改善すると今度は年金額が減り暮らしていけない~
統合失調症という精神疾患で障害基礎年金の1級を受給していたのに、2級になってしまったことが納得いかず、再審査請求をしている方の相談を受けている。横浜の社会保険労務士を訪ね、今日は市の国民年金係と年金機構の事務所へ行った。今後もできることを進めていくつもりだが、職員の話の中で、自治体によって障害年金が支給になるか不支給になるかずいぶんバラツキがあることがわかった。下記の表は2010年から2012年の3年間のそれぞれと、平均の不支給率が出ている。神奈川でみると10年は5.4、11年は8.2、12年は8.2平均だと7.2となる。これは100人請求して7.2人は支給されないことになったという意味だ。全国平均が12.5なので、神奈川は低いほう、つまり比較的支給されやすい県だと言える。一番平均で高いのは大分県の24.4で4人に1人は請求が通らないということになる。一方一番低いのは栃木県で4.0となり6倍もの差が出ている。
自治体によってバラツキがあるというのは、大変まずいと思う。判定する医師の数にもよるらしいし、そもそも医師はじっくりと丁寧に申請書に目を通す時間もないという。身体障害と違って精神障害はなかなか判定が難しい。1級になるか2級になるか、そもそもまったく対象外なのか・・・この差によって当事者は生活の仕方がまるで変ってしまう。
今日、一緒に行動したSさんも「社会の隅で薄氷の幸せでやってきたのに、これでは暮らしていけない。」と悩み苦しんでいた。政権与党は「自助・自立」がお好きだ。2級と1級では年間で20万~30万違う。2級になっても出るだけいいではないかとばかりに、あとは別居の家族にも援助してもらいなさいと扶養義務を振りかざす。あとは暮らしていけなきゃ、最後は生活保護ねというわけだ。
私は、「生活保護は国民の権利だ」と対象者にはすぐに生活保護を勧める。しかし、この方は生活保護には出来るだけなりたくないというご希望がある。障害年金の1級を支給されながら、工夫して生活していくことを希望しているのだ。だから、再審査請求にこだわる。私はこれはこの方の「クオリティ・オブ・ライフ」なんだと思う。贅沢の意味のクオリティではなくて、あくまで価値観の問題なんだと。「ミーニング・オブ・ライフ」と言ってもいいかもしれない。
それにしても、自治体によってバラツキがあるのはおかしい。是正するべきだ。「年金の出し渋りが増えている」「判定に差がある」という指摘が社会保険労務士や障害者団体から出ていたにもかかわらず、厚生労働省と年金機構は不支給件数の集計をしてこなかったという。全くずさんだ。
残念ながら、精神障害者の就職はものすごく難しい。就労に耐えられるだけのコンディションを維持するのが難しいし、社会の受け入れもまだまだ不十分だ。だからそうなると障害年金の支給で生活をやりくりすることになる。家族と一緒に住める人はいいが、そうでない人はおそらく2級の支給額では自立は難しい。生活保護の受給者が必然的に増えざるを得ない。このジレンマをどうするのか。今日の方が言っていた。「努力して症状を改善させると、今度は2級にされてしまう。これでは生活できない。何のための努力か。」日本の社会保障制度そのもののゆがみが表れていると思う。