大村洋子
大村洋子大村洋子

中国東北部の旅 瀋陽とハルビンに学ぶ④

もう、はっきりと年齢は覚えていませんが、おそらく18,9歳頃だったのではないかと思います。私は本多勝一氏が書いた「中国への旅」という本を読んで大衝撃を受けました。日本は過去に中国に対してなんて酷いことをしたのか、この思いは沖縄に対してもそうですが、私は日本人とはなんて恥ずかしい民族なのか、これがアジアの人々へのベースとなっています。日本会議系の人々から見ればまさに「自虐史観」ということでしょうが、基本的にこの思いは今現在も払拭しきれていません。

森村誠一氏が記した「悪魔の飽食」はあまりに有名で、私でも731部隊の悪行は知っています。「731部隊博物館」は写真にあるように「侵華日軍第七三一部隊罪証陳列館」となっています。実際の展示もこれでもかこれでもかというくらいに現物品、写真、模型などの資料や説明が並んでいました。「罪証」とあるように、これは日本軍が行った最低最悪の悪魔の所業です。絶対に中国人民は忘れないぞ、いいか、日本人よ、これが証拠だからな!と言われているようでした。

4日目731部隊陳列館2 (1)

これは「凍傷実験室遺跡」です。

ハルビンの冬は零下30度以下にもなる極寒で、「マルタ」と呼ばれ実験材料にされた捕虜の人々は手足に水をかけられ麻痺させられました。その凍傷状態の治療には何度の湯で温めるのが効果的なのかを実験したのです。

4日目731部隊軍事遺跡 (51)

731部隊では約3000名の捕虜が実験材料にされ虐殺されたと言われています。

ペスト、コレラ、赤痢、天然痘、各種チフス、破傷風、結核、ツツガムシ病、ボツリヌス菌、インフルエンザ、ダニ脳炎などあらゆる伝染性の細菌が「マルタ」と呼ばれた捕虜の身体を用いて細菌戦の武器として「吟味」されました。

女性「マルタ」には梅毒にかかった男性「マルタ」との性交が強要され、性病伝染の実験も行われました。ただ、命を奪うというのではなく、屈辱を強いているということに何ともやるせない思いです。

4日目731部隊陳列館 (28)

施設には医学者、医者、研究者、助手、看護師、助産師、将来の研究者養成のために雇用された少年隊員(200名)合わせて最盛期で2600名が勤務していました。

「「マルタ」はいずれ死刑だ。同じ死ぬのならば医学の材料として、人類の役に立って死ぬ方が良い」これは、731部隊内の医学者たちが自分たちを合理化するために用いた論理でした。しかし、実際、「マルタ」の多くは日本の侵略に対して勇敢にたたかい捕虜となった中国の愛国者でした。驚くことに、「マルタ」は日本統治下において武装抵抗し逮捕された朝鮮人パルチザン、また少数のモンゴル人、情報収集の過程で捕らえられたソ連赤軍将校もいたといいます。

4日目731部隊陳列館 (26)

下の写真は「マルタ」を収容していた「特別監獄」。証拠隠滅のために爆破されましたが、基礎部分が残っていました。世界遺産認定に向けて保護するため屋根を取り付けたとのことです。

4日目731部隊軍事遺跡 (40)

731部隊の象徴ともなっている煙突のあるボイラー室。証拠隠滅のため大量の資料が焼かれました。最後は爆破され真ん中の煙突は壊れましたが、両側の煙突は残りました。いかに日本軍が焦って逃げたのかということがわかります。

4日目731部隊軍事遺跡 (1)

731部隊の研究者として有名な下里正樹氏は以下のように記しています。

731部隊を評して「日本のアウシュビッツ」とする向きがある。たしかに731部隊のおこなった蛮行は、ナチス・ドイツのアウシュビッツ捕虜収容所のそれに似ている。しかし3つの違いがある。

①アウシュビッツと違い731部隊に収容された捕虜の生還者はゼロ

②アウシュビッツに関係したナチス・ドイツの秘密警察関係者は戦後厳しく戦争犯罪を問われた。しかし731部隊は石井四郎軍医中将以下、全員が戦犯に問われることなく免罪された。

③731部隊の元隊員たちは秘密を他者に口外しなかった。「三つの命令」である❶いかなる場合においても、軍歴を秘匿すべし。❷一切の公職に就くべからず。❸隊員相互の交通往来はこれを禁ずを固く守った。

こう書き、下里氏は731部隊とアウシュビッツの相違点を追っていくと、日本型ファシズムの特質が浮かび上がってくる。日本民族は、いまだかつて、みずからの戦争犯罪を自分たちの手で総括し、裁いた経験を持っていない。としめています。

 

最近、報道に上っている「徴用工問題」「慰安婦問題」もこのように総括しきれていない、反省しきれていない日本の姿勢にこそ根っこがあるのではないかと思います。

真実から目を背け、加害の歴史に向き合ってこなかった日本は、いつまでも逃げ回っていてはいけないと思います。未来志向と言うならば、まずは真摯な姿勢で心からの謝罪からはじめなければなりません。

4日目731部隊軍事遺跡 (79)

5日間の中国東北部の旅で「戦争と平和」について考え、以前よりも少し内容が膨らんだと思います。

ヒロシマ・ナガサキ核兵器廃絶、原子力空母はいらない!、憲法9条が輝く日本を!、強制連行、ヘリ空母いずも、創氏改名、千代ケ崎砲台跡、慰安婦、満蒙開拓義勇軍、日米地位協定の抜本改定、貝山地下壕、自衛隊のへ住民基本台帳名簿提出、辺野古新基地建設、安保関連法、オスプレイの横須賀飛来・配備、引き揚げの地浦賀、日米安全保障条約、旧軍港市転換法、米兵犯罪、731部隊、戦艦陸奥の主砲。たくさんのキーワードを意識しながら、つなぎ合わせて、これからも行動し考え、考え行動し自分自身の反戦・平和を豊富化していきたいと思います。