横須賀市議会 6月定例議会 一般質問と反対討論のリンクした部分をポイントにお伝えします
2019年6月定例議会が終わりました。
盛りだくさん過ぎて、議会期間と同じほどの振り返りが必要です。
まず、一般質問のラインナップです。
今回は
①加入者が納めることができる国民健康保険料にすることについ て
②防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律第8条の「民生安 定施設の助成」の中に「子育て支援の総合的な推進を図るために必要な施設」というメニューが新設されたことについて
③自治体の港湾管理権と原子力空母ロナルド・レーガンに関連する 問題について
④猿島のコンセプト及びアニメ「ONE PIECE」とのコラボ レーション企画の影響・対応等について
この4本。
6月定例議会の最終日に議案第60号という形で、実際にいわゆる防衛第8条、今回はその中に子育て支援を目的とした補助金が新設されたのですが、その具体時な動きとして、旧市立平作小学校の校舎等の解体工事にかかる費用について審査しました。給食センター建設には、もちろん賛成ですが、その整備の一番始まりの解体工事に、この防衛8条が充てられることに対して、私たちとして、どのような態度をとるかということが問われたわけです。
真剣に考えましたし、そのことも率直に討論で吐露しました。
議員団のホームページにも載せましたが、改めて以下、全文です。
日本共産党の大村洋子です。
本日2度目の討論となりますが、今度は賛成の立場での討論となります。
議案第60号旧市立平作小学校解体工事請負契約の締結についてです。
2021年8月稼働を目指す中学校完全給食のセンター整備に向けて、現在ある施設の解体工事を行うにあたっての議案であります。
先ほど行われた教育福祉常任委員会では、請負者は本市の事業者であること、また、解体される施設にはアスベストを含有するものがあり、飛散しないための対応もしっかり図られるとのことが確認できました。今後は地域住民の方々への解体工事の全工程の周知、とりわけアスベスト除去工事等についてしっかりと周知し、不安解消に努めていただきたいと思います。
さて、私たちがこの議案において最も力点を置いたのは、請負代金額の3億2,455万7,640円です。これは一般質問でも私が取り上げた、「防衛第8条民生安定施設の助成」の中に新設された「子育て支援の総合的な推進を図るために必要な施設」として充当できるメニュー、数年間にわたり総額で約35億円、今年度については9億3,500万円助成されるというもので、前述した解体工事の請負代金額はこの中から出されるというものです。
したがって、議案第60号は校舎等の解体工事請負契約締結という給食センター整備関連の議案ではありますが、財源の防衛第8条子育て支援の補助金をどう捉えるのかということが私たちにとっては眼目となりました。
防衛第8条子育て支援の補助金について、一般質問で取り上げた際、その関連で、私が「防衛省から来る補助金、交付金がないとやりたい施策や事業が回っていかないと思いますか」と伺うと「なきゃないなりに考えていきます」と市長は答弁されました。このやり取りが契機となり、本市にはいったい年間、基地があるが故の交付金、補助金がどのくらい入ってきているのだろうかと考え、30年余遡り調べてみました。普通交付税中の補正額は考慮せず、防衛3条、8条、9条、基地交付金、調整交付金を合計すると1993年平成5年には約22億8,000万円、だったものが、総じてゆっくりと増え続け、2006年平成18年には約26億円となり、再編交付金が約11億円入った2008年平成20年にはいっきに約36億6,000万円となり、3条8条の助成金が7億円を超えた2012年平成24年にはその年の合計額は42億円を超えました。今後はイージス艦配備の再編交付金と本格的な給食センター建設に対応する第8条の子育て支援メニューの補助金も加わり、おそらく過去最高額の基地ゆえの交付金・補助金の合計額となると思われます。私たちは基地関連の交付金、補助金が増えていくことについて、一概に否定的には捉えていません。固定資産税相当額にあたる交付金などは本来もっと交付されてしかるべきと考えています。イージス艦や空母関連で交付されてきた再編交付金については、迷惑料的な意味合いが強く、肯定はできません。基地関連の交付金、補助金を考える際は、当然、交付されてしかるべきものと捉えつつも、基地を前提にしているがゆえに基地に依拠していく構造となり、悩ましい面があるのが現状です。
本市はだいぶ以前に、もし、基地がなければ、年間の法人市民税がどのくらい入ってくるのかを試算したことがあったと聞いています。たしか、約100億円ほどだったと思います。一般質問でも少し触れましたが、上地市長は議員時代に、横浜のMM21を引用して、米海軍横須賀基地の8割程度の敷地面積であるこの臨海部が本市の基地関連の交付金の3倍以上の市税収入と9万人以上の雇用を生み出していることを強調され、逸失利益論を展開されていました。基地そのものをどう見るのかという点において、市長と私たちは考えが違いますが、基地があるゆえに、本市は本来獲得できるはずの利益を逸しているという考え方は総じて同じであると考えます。逸失利益論をもち、地域主権主義を掲げる市長が今回、防衛第8条の中に新たにメニューを新設させ、子育て支援の推進のために総額35億円獲得したということをどう捉えるか、私たちは真剣に考えました。これは一連の基地機能の強化に連動した防衛省からの、ねぎらいやご褒美の類ではないか、平たく言えば「アメとムチ」のアメではないのかということです。ですから、私は一般質問の中で、「結果として歪んだ財政基盤を生み出し、国への上意下達の精神を醸成させてしまうのではないか。これは軍転法の形骸化につながるのではないか」と申し上げました。この私の質問に対して、市長からは「大村議員のまったくの杞憂です。」ときっぱりと答弁されました。この答弁を絶対に忘れないでほしいと思います。国とは対等平等、協力関係であるという自治体の本旨は憲法にもはっきりと謳われていますし、市長は地域主権主義者を標榜されていますので、前述した逸失利益論と同様、この2つを今後も握って離さず、逸脱することなく、市政運営されますよう、私たちは常に是々非々の立場からチェックしてまいります。
最後に「こどもの給食施設に防衛省からの補助金を使うのはどうも納得がいかない」というご意見をいただいたことについて触れたいと思います。防衛第8条の中の新設の子育て支援メニューから9億3,500万円が給食センター建設へという記事は神奈川新聞の一面に掲載され、その記事を目にされた何人もの方々から私のところへ前述のようなご意見をいただきました。私は6月議会の間中、この問題を考え続けていましたが、行きついたのは、「いのちの問題への違和感」ではないかということです。お金に色がついているわけではないのだから、文部科学省からの補助金だろうが、防衛省からの補助金だろうが、本市が財政的に助かるのだからこだわる必要はない、そう考える方々もいらっしゃることでしょう。しかし、こどもたちの身体と心を育む給食センター建設に、紛争地域に展開する第七艦隊司令部のある米海軍基地と今やそれと連動して動く自衛隊施設を根拠とした補助金が使われるということに、いのちを生み出す母親たちの感性が直感的にNOのシグナルを出したとして、誰が否定できるでしょうか。今回の子育て支援メニューの補助金獲得は、市長をはじめ職員のみなさんの地道な交渉が実を結んだということは否定できませんが、国は国の論理で、本市を管理していきたいというのも事実でしょう。ですから、市長には逸失利益論と地域主権主義を両手に携えて国との交渉を本市主導で進めてほしいと思います。そして、一方で複雑な思いと感性で見守っている市民のみなさんがいらっしゃることも決して忘れないでほしいと申し添えておきます。以上で議案第60号旧市立平作小学校解体工事請負契約の締結についての日本共産党市議団の賛成討論といたします。
この賛成討論は、実は自分としては一般質問における市長とのやり取りを念頭に置きながら、呼応するかたちで作成しました。以下、一般質問の該当箇所をピックアップしておきます。
大村質問:次に、防衛第8条、民生安定施設の助成の中に、新たに子育て支援の総合的な推進を図るために必要な施設として充当できるメニューが新設されたことについて伺います。
このメニューは、本市の給食センター建設とこども園再編に充当できることとなりました。市長は、粘り強く交渉してきた結果、訴えの成果と言ってもいいとおっしゃっていますので、当然喜ばしいことと受け取っていると思われますが、この補助金はもともと防衛施設があることで市民生活に影響が及ぶ可能性があるとして、防衛省が自治体に出しているという性格のものですから、新たにメニューが加わったということは、本市に新たに影響が及ぶ施設があるということと捉えることができると思います。この点について市長はどのように捉えていらっしゃるでしょうか、御所見を伺います。
また、今後数年にわたって交付される予定とのことですが、毎年度の助成金交付額はどのように決定され、交付総額や交付期間はどのように設定されるのでしょうか。見通しはあるのでしょうか、覚書のようなものを交わしているのでしょうか、伺います。
私は今回の子育て支援の総合的な推進を図るために必要な施設の項目が設けられたことは、安保関連法施行の具体的な動きとして、船越の海上作戦センターやヘリポート建設、比与宇弾薬庫の拡大、ヘリ空母いずもへのF35の搭載等、一連の自衛隊施設の機能強化に対する信賞必罰の信賞ではないかと感じています。つまり、信賞があるならば必罰もある。本市が安全保障関連で政府の希望や要求に応じられなければ、ペナルティーが科されるというものではないかと懸念します。実際、基地関連の交付金、補助金に関して、この手の話は全国を見れば枚挙にいとまがありません。政府の顔色を一々見ながら市政運営をしなければならないとしたら、地域主権主義が地に落ちます。市長が逸失利益論を根底に持ち、どうやったら国から補助金を獲得できるかに尽力してこられたことは重々承知していますが、それが結果としてゆがんだ財政基盤を生み出し、国への上意下達の精神を醸成させてしまうとしたら、それは市長の本旨ではないと思います。私のこのような思いは杞憂でしょうか。市長のお考えをお聞かせください。
「旧軍港市転換法や本市の基本構想、基本計画の可能な限りの米軍基地の返還と自衛隊施設の集約、統合を国に要請します」という文言が、いよいよ絵に描いた餅になり、結果として形骸化していかざるを得ないことに私は強い危惧を抱きますが、この点について市長の御所見を伺います。
市長答弁:次に、防衛省補助の新メニューについてです。
今回の補助メニューの追加は、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律第8条に新たな補助メニューが加わったものであります。したがいまして、本市に新たな影響が及ぶ施設があるのではという御懸念は当たりません。
次に、補助金の交付総額と交付期間についてです。
今回の補助金については、対象事業者に対して、事業費に対して75%の補助金が交付されるものです。事業対象が数年度にわたる場合は、その整備状況に応じて年度ごとに交付されます。
なお、給食センターは既に補助採択されており、令和3年までに約35億円の補助が受けられる見込みとなっています。したがって、覚書が存在するようなものではありません。
次に、国への上意下達の精神の醸成についてです。
補助金の獲得が国への上意下達の精神を醸成させるということは全くありません。大村議員の全くの杞憂です。
次に、旧軍港市転換法や基本構想の形骸化についてです。
基本計画にうたわれている可能な限りの米軍基地返還、自衛隊施設の集約・統合は、本市の基本姿勢であり、形骸化されているとは私は考えていません。
一問一答
大村:そして、2番目の内容で、子育て支援の総合的な推進を図るために必要な施設のメニュー、これが新たに加わったということについても伺いたいと思うのですが、私は中学校完全給食実施等検討特別委員会にも所属していまして、そのときにもこの財源の問題というのは議論した記憶があります。その際は防衛省からお金をいただく際には、防災食育センターで75%の補助をもらうということが、おおむねそんな方向で議論されていたと思うのですが、この防災食育センターではだめですか。
市長:食育センターではだめだったと思っています。名称として給食センターとなければならないというふうに聞き及んでいます。
大村:少し質問の趣旨が伝わっておりませんが、防災食育センターというメニューの中で、それをタイトルにしてもお金は75%補助金が出るというふうになっていたと思うのですが、そのメニューではなくて、新たに第8条の中に子育て支援の総合的な推進を図るために必要な施設というのを今回交渉されて、そして新たにメニューをつけたわけです。その工夫をされてやったというのは理解できるのですけれども、もともと75%防衛省から第8条で補助を獲得できるはずだったと思いますよ。そこに対して、そうではないですか。もう一回すみません。
市長:渉外部長から今説明させます。
渉外部長:まず、防災食育センターという形で給食センターを整備することは可能だと思います。ただし、あくまで給食センターしか整備できないと思います。これまでのメニューの中には、防災知識の普及を促進するための催し、その他防災に関する活動の用に供する施設、このメニューを使って給食センターを整備しなければならない状況だったと。給食センターにそれなりの防災機能であるとか、そういうものをあえて本来必要でない部分についても整備しなければならないというような状況がございました。
大:中学校完全給食実施等検討特別委員会の中でも、防災施設も入れ込んで給食センターをつくりましょうという流れだったと思います。ですから、あえて子育て支援の総合的な推進を図るために必要な施設という項目を設けたということが、いま一つ私にはすとんと胸に落ちない部分がありまして、これはこれで終わりとしまして、一方で、もともと給食センターは教育施設ですから、文部科学省からお金をいただくというのが一番の筋なのだろうと思うのですが、文部科学省から50%補助金をもらう。そして、それでは足りないのでという点で、改めて防衛省からお金をもらう。これはできますか。
○議長(板橋 衛) 上地市長。
○市長(上地克明) できません。それから、今の防災食育センターの75%の話なのだけれども、それだと横須賀市がこれから整備するものにはできないと考えたからです。いろいろな防災関係を背負ったら、より費用が膨らみ大変な事業費がかかる。そのために、これに絞るためには、この方法しかなかったということです。
大村:そうすると、私自身は全く新しい発想で市長が交渉されて、メニューを今回新たにつくられたのかと思ったのですが、そうではなく、防災食育センターというものにしなければつくれないということから、子育て支援の総合的な推進を図るために必要な施設というメニューをつくったということですか。
市長:こども園も入っているのです。こども園も75%に入るという総合的なグランドデザインを引いて交渉したということで、そのためには防災を外して、子どもに特定して総合的整備に対してどうなのかということを働きかけて、75%の新しい補助金をいただくことになったということですから、一つの問題ではない、総合的だというふうに理解しています。
大村:自分の中でもこの問題はしっかり捉えて整理をつけなければいけないと思っています。というのは、給食の運動をされた方々から、神奈川新聞の一面に載りましたね、この記事が。ですから、私のところにも何人もの方が、子どもの給食センターをつくるに当たって防衛省からお金が出るというのはどうも納得ができない、そういう感想というか、お気持ちを伺っています。そういう背景もありながら聞いています。
かつて市長が、特に防衛省からお金、補助金を獲得する際に、MM21のお話を引き合いに出して、そして独自に市が計算をして交渉するというのが道理ではないかということをおっしゃったことがあるのですが、今はそんなお考えではないのですか。
上地:しっかりと遺失利益論を私は持っています。遺失利益論を踏まえた上で、さまざまなメニューの中で交渉しているというふうに理解しています。これは、若いうちから地域資源主義者で遺失利益論は常に頭の中にあって、今私この立場にいて、遺失利益論を具体的に出す立場でもないし、それは問題が大きくなるので。ですから、それを踏まえた上で、こういう子どもの施設の整備に関しては、こういうお金がいただけるものではないでしょうかということを、グランドデザインを引きながら国に対してお願いしているということもあります。一歩たりとも遺失利益論を忘れたことはありません。
大村:国からたくさんのメニューでお金が入ってきているわけですけれども、最後にこれだけ伺いたいと思いますが、基地があるがゆえに、国から来るお金がいろいろなメニューがあると思います。第8条、第9条、第3条、それからいろいろな交付金であるとか、再編交付金も含めてあるわけなのですけれども、そういった防衛省から来る補助金や交付金がないと予算編成ができないという状況に、今、横須賀市はなっていますでしょうか。
市長:基本的には、現状ではそうだというふうに思います。ある部分です。
大村:現状では国から、防衛省から来る補助金や交付金がないと予算編成できないということですか。はっきりおっしゃって。
上地:予算編成ができないとはどういう意味ですか。これはいけないのか。
予算編成はできますよ。歳入と歳出を合わせればいいわけだから。できないという意味がよくわからないのですが。
大村:予算編成できないというのは、少し過大な言い方になったかもしれませんが、要はいろいろな事業や施策を市長がやりたいと言ったときに、それがうまく回っていかないというようなことが、この防衛省からの補助金、交付金がない場合に、あり得るのでしょうかということです。
市長:今、ありがたいことに国の補助をいただいてこうなっていますが、なければないなりに考えていかなければいけないという、これは当たり前の話です。ですから、いかに民間のお金を投資させてもらうかということが一番私は大切だと思っています。現状ではできる限り国の力をかりながらやっていって、そういう状況になればいいというふうに考えています。
大村:なければないでできるというのは、私はそれが一番いいと思います。基地がないことが一番いいと思います。
今回は、団としても自分としてもだいぶ踏み込んで、基地交付金を議論したと思います。国と自治体の関係性、軍転法との関係、いろいろな角度でこれからも勉強し横須賀市政のあり方を考えていきます。
最後までお読みいただきありがとうございます。