大村洋子
大村洋子大村洋子

まち・ひと・しごと地方創生 これで、横須賀はどう変わる?-4

1,2,3からご覧ください。

前回、3の最後のところで、「若い人がそもそも、結婚できる経済常態か」ということを考えてみたいと書いた。

国は、基本目標として

① 地方における安定した雇用を創出する。

② 地方への新しいひとの流れをつくる。

③ 若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる。

④ 時代に合った地域をつくり、安心な暮らしを守るとともに、地域と地域を連携する。

この4つの柱を立てている。その中でも③に見られるように若い世代の結婚、出産、子育てを応援する姿勢を強調している。この姿勢は基本的には良いと思うけれど、3でも書いたように、子どもを持つことがイコール人としての幸福と決めつけてしまうのはNGってことだ。様々な生き方があってそれを尊重することが必要、これは大前提だ。

先日、私の浦賀の事務所に赤ちゃんをベビーカーに乗せた若いご夫婦が相談にみえた。2人とも20代で、最近、夫が務めていた仕事を辞めて、新しい職場に移ったが、その職場が謳われていた内容と違っていたというものだった。ざっと話を伺っただけだが、明らかに労働基準法違反だった。

彼が言うには「前の職場では一定期間働いたら、正規職員にしてくれるという約束だったのに、一向にそういう気配がないので、辞めた。今度の職場は安定した職場だと思って選んだのに、実際は違っていた。」とのことだった。

この方々は、子どもさんを近所の実家にあずけて、2人とも働いていた。今、現実社会の中で、この方々は珍しいタイプではないと思う。若い人は仕事で安定するために必死なのだと思う。

働いても働いても、なかなか生活が立ち行かない、ワーキング・プア(年収200万円以下の働く貧困層)は2013年度国税庁の調査では1100万人を超えている。しかも1000万人を超えたのは、8年連続とのことで、15年前の1998年と比べると1.4倍の増加となっている。さらに詳しくみると、年収100万円以下の労働者は421万5000人で低賃金層は増えている。

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若い年齢層や女性の2人に1人は非正規雇用と言われているので、ワーキング・プアのかなりな割合が若い世代ではないかと思われる。確かに高収入の若者もいるだろうが、多くの若者が経済的に厳しいのではないか。

そうなると結婚したり子どもを育てるという前に、そもそも、自分が親元から独立ができない。いわゆる「パラサイト」にならざるを得ない。

安定した雇用の創出を国は謳っているが、雇用だけではだめだ。安定した賃金こそ保障しなければならない。そのためには、多くの労働者が働く中小企業への支援と行き過ぎだ大企業へのテコ入れを止めるべきだ。

年々増していく防衛費を削減して、大企業への法人税減税を止めて、賃金保障と時給1000円以上にするために、大胆に中小企業支援の政策を打つべきだ。

まずは、安定して働き賃金を得られなければ、自立し新しい家族をつくっていこうなどと考えられるわけもない。こんな簡単な自明の理がなぜ、長きに渡って、自公政権(民主党政権も同じだが)には理解されないのか、私には理解できない。

国の動向は、増々逆方向へ進んでいる。抜本的な改革をしなければ、マイナスのループの中で抜け出せなくなってしまう。もうすでにかなり致命的だと思う。

まち・ひと・しごと創生総合戦略検討特別委員会は9月以降も行われていく。国が行ってきた、あるいは行っていこうとする政策をデータを見ながら数値と推移をみて俯瞰的に考えていくことが必要と思う。横須賀らしさを盛り込むべきだとの意見が、多くの委員から出されたが、果たして、そういうオリジナルな内容を盛り込めるほど余裕のある状況だろうかと、私は少々悲観的だ。つづきは9月。