生活保護を巡る問題意識③
この間、一般質問で取り上げた生活保護を巡る問題意識について書いてきた。①では2013年に制度が改悪され基準額が平均6.5%減となったこと。このことによって全国で訴訟が起こり違憲判決が半分ほど出されたということ。制度そのものがすでに成り立たない状況であるということに加え、現在の物価高騰を受けて厳しい生活のやりくりをしている利用者に対して、福祉減免(水道料金等の減免)の復活を提案したこと。これらに触れた。
②では福祉減免復活の提案についての一般質問での具体的やりとりから、市のこの制度に対する自己矛盾答弁を分析するとともに、なぜ私が「受給者」ではなく「利用者」と表現するのかの理由について述べた。
今回は「扶養照会」について考えてみたいと思う。
これは国会で我が党の小池晃参議院議員が取り上げ、大きな話題となり、現在のような以前から比べれば少し緩和された形になったという経緯がある。生活保護の申請を巡るこの10年、20年のスパンにおける変遷を振り返ると、これはこれで、一つのテーマになり得るほどのボリュウームになるが、駆け足で端折りがちに振り返ると、
2008年 リーマンショック。年末年始、多くの失業者が顕在化。生活保護制度を利用する人々が増えた。
2011年 東日本大震災後も利用者は増えた。
2012年 芸能人の母親が生活保護を利用し、これが不正受給あたるのではないか、一気に生活保護の申請のハードルが上がった。結果、不正受給にはあたらないことが明確になった。
2013年 生活保護基準額の引き下げ。
2016年 「いのちのとりで裁判全国アクション」がはじまった。
2017年 「小田原ジャンパー事件」の報告書がまとめられた。
2020年 コロナパンデミック 生活保護申請が増える。
2021年 厚労省から「扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点について」が各自治体担当者に通知された。以下がその通知文書。
生活保護制度を巡ってはこの間、本当に激動しているといってよい状況だったことがわかる。人の暮らす最低限度を国が決めるということだから、その国家がその国民の暮らしをどう考えるかということが浮き彫りになるし、この基準自体が多くの制度の物差しになる。
さて、「扶養照会」
厚労省の通知の内容にはいくつかのポイントがあるが、その中でも私が着目した点は一つは扶養照会が生活保護申請の要件ではないことを明確にしたところだ。これは元々、生活保護法にもうたわれているし、今までもそうであったが、現場では特に若く経験の浅い職員はこのことを知らない人も多いと言われていた。なので、今回改めて念押しの文書がでたことによって、福祉事務所における扶養照会への意識改革が進んでいくと思われる。
2つ目は「扶養義務履行が期待できない者の判断基準」として今回具体的に踏み込んだ内容となった点だ。その判断基準は①現在生活保護を利用している人、福祉施設入所の人、長く入院している人、専業主婦・主夫、未成年者、おおむね70歳以上の高齢の人
②生活保護申請者に金を貸している人、相続で対立しているなどの人、縁切り状態で関係性の悪い人、10年以上音信普通で交流断絶の人
③DV、虐待の可能性のある人
「おおむね」とか「など」という表現が入っている点を私は福祉事務所の裁量権と解釈する。申請する市民の思いに徹底的に立ち親身になって相談を受けることを切に期待する。一般質問では市長が答えられず、部長を指名したが、その答弁において部長は本人の同意なしに扶養照会は行わない旨、はっきりと述べた。そして、今回の通知で扶養照会が緩和されたという評価も述べた。この答弁にもとづいた運用をしっかりと行っていただきたい。
これ以降は④で展開。扶養照会やスティグマ問題は人間の内面をえぐる非常にセンシティヴな問題。④ではそのあたりを考えたいと思う。