大村洋子
大村洋子大村洋子

PCR検査体制のない護衛艦「たかなみ」を速やかに中東から帰港させてください。自衛隊員のいのちと健康を一番に考えてください。

自衛隊をどう捉えるかということが、特に2015年前後の安保関連法の反対運動、強行採決、施行の流れの中で、避けて通ることのできない問題として浮上してきました。

私自身の自衛隊観という意味です。

上地市長が昨年2019年6月10日の一般質問の答弁で、これは日本共産党のねぎしかずこ議員への答弁でしたが、「自衛隊罪悪論みたいな論調になってくると・・・」と言って、論点をすり替え偏見を露呈させたことありました。

日本共産党は自衛隊=悪だと思っている。バイアスがかかったあなた方の論調では議論をフェアに行えないのではないか・・・市長の言いたいことはこんなことだったのだと思います。

このような見方は、ひとり市長に留まらず、おそらく世間一般の日本共産党へのお決まりの偏見なのだろうと思いました。わかりやすい反応でした。

ねぎし議員が提起した問題に対して、論点をすり替えた態度は姑息だと思いましたし、そのことにお気づきでないようでしたから、同じ年の9月定例議会で今度は私が指摘をしておきました。「自衛隊を善とか悪とかで私たちは論じているわけではない」と。

善とか悪ではあまりに抽象的です。憲法の観点で考えれば、私は違法だと思います。存在に矛盾があります。特に安保関連法施行後は完全に逸脱しています。

おそらく、現政権やそれを容認する人々はそうは思わないのでしょう。論理が破綻しているのに、いつまでも拘泥していると思います。

自衛隊が好きとか嫌いとか、貢献しているとか、税金の無駄遣いだとか、そういうことではなくて、システムとして、存在として適正なのかという意味です。ただ、今、すぐにこのことが第一義に論じられなければならないことかというとそうではありません。自衛隊の違憲・合憲の議論は現段階では棚上げしてもよいと思います。まずは安倍政権を倒すことが眼目です。

話を戻して、前述したように、安保関連法の運動の中で、自衛隊をどう捉えるかということが、私の中で大きなテーマとなりました。憲法9条を守れ!と言った時に、それに続けて「自衛隊のいのちも守れ!」と叫ぶ。正直に言えばこれは私の中ではかなり咀嚼・反芻の必要な言葉でした。

市長が自衛隊罪悪論を突きつけてきた際に、それを完全に打ち消すことができる主体性を持っているのかということです。自衛隊=悪 自衛隊=敵 であるならば、どうして、自衛隊のいのちを守るということを高らかに叫ぶことができるでしょうか。

2015年以降、自衛隊をどう捉えるかということを考えながら、ある意味悶々たる思いを持ちながら、活動してきた私の中で、新たな段階に入ったと感じたのが護衛艦「たかなみ」の中東派遣反対の運動でした。

非核市民宣言運動・ヨコスカやヨコスカ平和船団のみなさんとの行動。

そして、日本共産党としては、はたの君枝衆議院議員、井坂しんや県議と共に海上自衛隊地方総監部へ要請を行いました。

たかなみ行かないで集会デモ (1)

 

海上自衛隊地方総監部へ「たかなみ」派遣中止要請行動 (2)

海上自衛隊地方総監部へ「たかなみ」派遣中止要請行動 (5)

海上自衛隊地方総監部へ「たかなみ」派遣中止要請行動 (4)

「護衛艦たかなみを中東派遣するのは心配なので、止めてもらえませんか」私はそう、訴えました。「調査、研究」という名目でも、実際に交戦状態になることも十分ありえる、自衛隊の命が危なくなる。それは避けるべきだ。そう、言いました。要請行動に臨席した人々の総意だったと思います。

市議団は護衛艦「たかなみ」の中東派遣について3月の定例議会の中でも代表質問に反映させました。以下に井坂なおし議員の質問と市長の答弁の関連個所を抜粋。

井坂なおし議員の代表質問

国は、日米同盟の強化をうたい、5年間で27兆4,700億円もの巨額の軍事費を投入しました。本市を母港とする「いずも」へのF35Bステルス戦闘機6機の搭載と発着を可能とする改修はその具体例です。昨年7月、「いずも」は米海兵隊とともにオーストラリア北東部海岸で上陸・戦闘演習を実施しています。

 このように、もはや「いずも」は護衛艦などではなく、専守防衛から完全に逸脱し、名実ともに航空母艦となっています。明らかに自衛隊の任務が変質した現在において、今回の護衛艦「たかなみ」の出港は重大な意味を持ちます。

 私たち日本共産党市議団は、海上自衛隊横須賀地方総監部に「中東への派遣を止めてほしい。自衛官の命が心配」と要請行動を行いました。市長も「自衛隊も市民」とおっしゃっているわけですから、護衛艦「たかなみ」の出港に反対の表明をするべきではないでしょうか伺います。

 

市長答弁

次に、護衛艦「たかなみ」の出港についてです。

 自衛隊の運用に関しては、国で議論するべきものであり、一首長がその是非について発言する立場にはありませんが、派遣された隊員の方々が安全に任務を遂行し、帰国されることを願っています。地元市長としては、隊員の方々のサポートはもとより、その活動を見守る御家族の方々も支援することは当然のことではないかと考えます。

 

護衛艦「たかなみ」が中東に派遣されて約2か月経った4月3日。衆議院外務委員会で日本共産党の穀田恵二衆議院議員が護衛艦「たかなみ」艦内における新型コロナウイルス感染状況について質しました。防衛省の渡辺孝一政務官は「感染者、あるいは疑いのある人は出ていない」と答弁。しかし穀田議員が判定に必要なPCR検査の体制について質すと、「PCR検査に必要な装備等は搭載されておらず、実施できる体制はない」との答弁でした。穀田議員はその答弁を受けて「検査もせずに『全員が健康』というのは、科学的根拠がない」さらに「まともな感染対策もないまま自衛隊を中東地域に送り出した政府の責任は重大だと」批判しました。

私はこのやり取りをYouTubeで視聴して呆れました。「たかなみ」が中東に向かうために横須賀を出港したのは2月2日です。

新型コロナウイルスの報道は昨年の12月31日にはじめておこなわれており、今年1月にはWHOが中国武漢における蔓延に対して対応しており、日本でも連日報道がされていました。2月2日には当然、既知の出来事だったのです。

「たかなみ」にPCR検査に必要な装備等を搭載しなかった(出来なかった)ということは、2月2日の時点における防衛省の認識がその程度のものだったということでしょう。これはどういうことかというと、危機管理が希薄だったということです。そして、この「たかなみ」の中東派遣がそれほど用意周到に行われたものではなく、とにかく米国とイランの顔色を見ながら、短時間に決められたことだったということだと思います。

PCR検査の装備もないのに「全員が健康」と言ってしまえる防衛省政務官ははっきり言って人の道から外れていると思います。これを聴いた「たかなみ」乗組員の家族はどう思ったでしょうか。私が家族だったら、呪いたくなります。

 

市長に要請を出しました。

以下に写真と要請文の抜粋。

新型コロナ申し入れ画像

上地克明 市長 様

新型コロナウイルス感染症拡大から市民の命を守るための緊急要請

2020年4月9日

                 日本共産党市議団 団長 大村洋子

                               ねぎしかずこ

                               井坂なおし

新型コロナ感染症拡大防止にご奮闘を続けておられる貴職に、心より敬意を表します。

横須賀から中東に向かった海上自衛隊護衛艦「たかなみ」についてです。

4月3日の外務委員会で行われた日本共産党の穀田衆院議員の質問に対し、防衛省の渡辺孝一政務官は「検査に必要な装備等は搭載されておらず実施できる体制はない」と答弁したことで、新型コロナ検査体制整備がされていないことが重大問題として発覚しました。

これを受けてか、政府は、当初予定より早く「たかなみ」を横須賀に戻すのでは、と報道されています。

まともな対策がされないまま自衛隊部隊を中東に送り出した政府の責任は重大であり、到底、許されないことで、当然の措置と思います。

国連のグテーレス事務総長が3月23日「世界のあらゆる場所での即時停戦」を呼び掛け70か国が支持しているように、軍事がどうの、という時ではないことは明らかです。横須賀市民の命を守るため、また、新型コロナで大変心細い毎日を過ごしながら留守を預かるご家族のためにも、一刻も早く帰港できるよう、速やかな撤収を市長からも働きかけてください。

1、 海上自衛隊護衛艦「たかなみ」を中東から速やかに撤収させ、PCR検査で陰性を確認したうえで、横須賀に自衛官をもどすよう、国に働きかけること

 

さて、最初の市長答弁の「自衛隊罪悪論」をもう一度振り返りますが、私たちは心の底から、自衛隊の命が心配と思い、「たかなみ」の中東派遣を止めてもらいたいと言い、PCR検査の装備もない状況を知り、速やかに帰港することを要請しました。自衛隊=悪とか自衛隊=敵とか、いろいろ日本共産党に対して偏見を持つ方々がいますが、私は今の自衛隊のみなさんが置かれている状況は、あまりにむごい状況だと思います。防衛省や外務省が自衛隊を単なるシステムではなく、人間の集団だと思っているなら、このような非人道的な状況を直ちに解消するべきだと思います。

防衛省は「たかなみ」の後継として護衛艦「きりさめ」を中東派遣する考えを示しています。新型コロナウイルス対策に万全を期して、感染者が出れば隔離や付近の病院搬送で対応し、「最悪戻ってくることもある」と撤退の可能性も示唆したとのことです。そんなこと言うなら、はじめから行かなければいいのにと思います。生きた人間集団を単なるシステムや装置に貶めるやりかたに心底、胸が悪くなります。