大村洋子
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サザンが「ピースとハイライト」で安倍政権を痛烈批判。「平和の琉歌」も聴きたかったよ、桑田さん!

大晦日の風物詩である「紅白歌合戦」。長丁場ながら、結構楽しめました。ネット上では、サザンオールスターズの「ピースとハイライト」が賛否両論のようです。CM曲としてテレビから流れてきたときには、あぁ、これは政治をパロってるなくらいにしか感じませんでしたが、紅白では画面下に歌詞がバッチリ出るので、まさに・・・まさにって感じで、桑田さん、大晦日の全国集中時間にこれを歌うかよぉ・・・と小気味良いったらなかったです。ちなみに日本共産党の山下芳生書記局長はツイッターで「しびれた」とつぶやいていました。

「教科書は現代史を やる前に時間切れ そこが一番知りたいのに 何でそうなっちゃうの?」 「歴史を照らし合わせて 助け合えたらいいじゃない 硬い拳を振り上げても 心開かない」「都合のいい大義名分(かいしゃく)で 争いを仕掛けて 裸の王様が牛耳る世は・・・狂気(Insane) 20世紀で懲りたはずでしょう? 燻る火種が燃え上がるだけ」「色んな事情があるけどさ 知ろうよ 互いのイイところ!!」歌詞をよーく噛みしめると、ふむふむ今の政権のことを強烈に批判しているとわかります。

ピースとハイライトというタイトルも、桑田佳祐氏の父親と自身が吸っていたタバコということらしいのですが、「平和と極右」という見方が本当のところのようです。紅白歌合戦に生出演した桑田氏は「このままでいいですか?」とかふざけて、でも本当はそこに注目してほしかったからなのか、鼻の下にチョビ髭を付けていました。ネットの中では「植木等か?」なんてのがあったけれど、あれはチャーリー・チャップリンが独裁者で演じたのと同じで、ヒトラーをもじったものだと思います。つまり、昨年の7月1日に集団的自衛権行使容認を強引に閣議決定した、現首相への辛辣な当て擦りです。

安倍夫妻は数日前に、サザンオールスターズのコンサートに行っているということですから、いったいどんな思いでこの歌を聴いていたのでしょうか。来たことを後悔でもしたんでしょうか。

ところで、桑田佳祐氏は「平和の琉歌」という沖縄をテーマにした曲も作っていて、私はこれも紅白で歌ってほしかったなぁと思いました。この曲にも「この国が平和だと誰が決めたの? 人の涙も乾かぬうちに」「アメリカの傘の下 夢も見ました 民を見捨てた戦争(いくさ)の果てに」「人として生きるのを 何故に拒むの?隣り合わせの軍人さんよ」という歌詞があり、よーく聴くとはっとさせられます。沖縄では辺野古新基地建設反対の翁長県知事が誕生し、総選挙では4つの小選挙区で全て自民党の候補者が選ばれず、基地建設反対の候補者が勝利しました。「平和の琉歌」は沖縄のたたかいへの大きなエールともなり、あぁ、本当に歌ってほしかったなぁ。

クリエイター、アーティスト、表現者というのは時代に敏感な感性を持った人たちです。時代の空気感をよみこみストレートではないにせよ、自分のやり方で発信する。総選挙を前後して、ずいぶん多くの芸能人が実は多様な反戦・平和活動をしていることが報じられました。高畑勲監督は「日本共産党に伸びてほしい。投票します。」と発言されたし、亡くなった菅原文太さんは沖縄県知事選挙で翁長さんを応援していました。吉永小百合さんは長い間原爆詩集の朗読活動を行ってきていて、最近では安倍首相への警戒感を発言されているといいます。ジュリーこと沢田研二さんは憲法九条を守ることを歌っていますし、東山紀之さんは自身の生い立ちを赤裸々に語り差別は許さないと自著で展開しています。そうそう、八代亜紀さんは赤旗まつりで熱唱してくれました。

日本人は露骨な政治的発言を好みません。「こんにちは、今日は寒いですね。」とお天気の話をして、当たり障りなく付き合います。しかし、時代や社会が明らかにおかしくなってきているときに、いつまでもお天気の話でお茶を濁していていいはずはないのです。サザンオールスターズが31年ぶりに紅白歌合戦に出場し「ピースとハイライト」で安倍政権を痛烈批判、まだまだ、捨てたもんじゃないですぜ、ニッポンって思いましたよ、私は。