大村洋子
大村洋子大村洋子

満員電車と非正規労働者とクラウドソーシングについて考える③

お時間あれば、①②からご覧ください。

今回のクラウドソーシングのセミナーでは、「時間にとらわれない新しい働き方」とタイトルのついた冊子が配られた。その中に100人のアンケートの結果も載せてあって、いくつか目を引いたものがあった。お金についての設問ではQ:現在の貯蓄額を教えてください。とあり、100万円未満が54名、100万円~500万円が30名、それ以上が16名だった。Q:フリーランス以前と比べて収入は増えましたか?という設問にはYESが63名、NOが37名。Q:安定した収入を得られていると感じますか?という設問にはYESが23名、NOが77名だった。

この結果を見て、正直、経済的な面でフリーランスで働くのは厳しいなぁと思った。母数集団が100人なので、これだけを見て全体を決めつけるのは拙速だと思う。しかし、貯蓄額が100万未満が半数以上いて、以前より収入は増えたが、かと言ってそれで安定しているとは思っていないというアンケート結果は、総じて“そんなに甘かぁない”、否、どちらかというと不安定で、ともすれば、生活困窮に陥る可能性もあるということだと私は辛口に受け取る。

セミナー当日、パネラーの発言に「自分を律する」という言葉が2回聞かれた。時間が自由ということはすなわち束縛されないということであり、それは人間にとって必ずしも楽なことではないのだと、改めて感じた。

私は多かれ少なかれ、仕事をするということは、物理的に身体も含めて一定度の拘束があって、そのタガの中でやり抜くという側面があると思う。時間や空間や人の拘束力が高いモチベーションを生み出すことがある。そして、それは集団の中で限られた時間で結果を出さねばならないという状況を作り出す。チーム内の協力、団結、そのためには折り合いを付ける、強調しあうコミュニケーション能力が必要だ。

クラウドソーシングという働き方は、全く外的に他者との関わりがないものでもないと思うが、基本的には自分が自分の力で進めていくことになる。さっき、賃金や暮らし向きについて不安定になるのではないかと懸念したが、同時に人と人の関わりを希薄なものに変えてしまうのではないかと心配だ。仕事以外でのコミュニケーションが活発になるから大丈夫だという意見があるかもしれない。部分的にはそういうことにもなるだろう。しかし、やはり人にとって仕事をするというのは、人間関係や社会をつくるうえで、基本的なことだと思う。上手く言えないけど、狩猟採集、農耕、漁、隊商を組んでの物々交換等、人類の流れから考えると、クラウドソーシングという働き方はすごく画歴史的なことではないかということだ。

コンピューターの登場は、移動しなくても物事が進むということや、いっぺんに多くの人々に物事が伝わる、拡散するということなど優れた点がいくつかある。前者は身体の不自由な人々や高齢者、コミュニケーションが苦手な人々には都合が良い。総じて、時間、労力、お金の短縮につながる。この利点をコントロールして使いこなすことが大事だと思う。その利点は十分認めるが、万々歳でクラウドソーシングに強力に傾くことには、今の時点では違和感を覚える。

人にとって所属するとは何か、そして、細切れで仕事をする、企業が労働者の人生に責任を負わない社会になっていること・・・考えてみたいことが生起される。次回へ。

 

南処理工場・焼却場 久里浜事務所 可愛らしい置物

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