「平和モニュメント」の撤去・新設の方針の杜撰さ
9月議会の一般会計補正予算の議案のうち、都市整備常任委員会・分科会で審査された中央公園整備事業については納得がいきません。
具体的には「平和モニュメント」の撤去・新設という方針、これは直接市長に聴かなければ解明できないと思い、今日の予算決算常任委員会に「総括質疑」の発言通告を出しました。
しかし結果として、それは理事会の中で了承されることはなく、市長との「総括質疑」は成りませんでした。
せっかく、質問の構想を練り、明らかにしたいことを洗い出したというのに、まったく残念です。
横須賀市議会予算決算常任委員会運営要綱には次のように謳われています。
(締めくくりの総括質疑)
第8条
2 締めくくりの総括質疑は、複数の分科会に関連する内容あるいは政策的判断を求める内容に限り、行うことができる。なお、原則として第3条に規定する質疑を行った委員による同一項目の総括質疑及び補正予算審査における総括質疑は行わない。
私は、「平和モニュメント」の撤去・新設をテーマにする「総括質疑」を市長の政策的判断を求めるものとして行うつもりでした。そして、「平和モニュメント」の撤去・新設は都市整備分科会と総務分科会という複数の分科会に関連しています。さらに、都市整備分科会ですでに質疑を交わしたねぎしかずこ議員ではなく、私大村洋子が同一項目以外の観点で質問をする予定にしていましたから、8条の2のうち3点について合致すると思い、発言通告を提出したのです。しかし、この議案は補正予算であったため、了承されなかったのだと思います。
返す返すも残念です。
私がこの議案で最も納得がいかないのは、「平和モニュメント」をなぜ撤去するとしたかです。その理由を明確にしたいと思いました。
環境政策部は「市民の安全性」を繰り返していました。しかし、それは違います。横須賀市が「平和モニュメント」の撤去・新設を決定したのは今年の4月なのです。その前に委託調査を行ったのは2年前の2017年です。その時には鉄の粉が500キログラム出たり、内部に水が70~80cm溜まっていたとのことですが、議会へは報告がありませんでした。なぜ報告しなかったかと言えば、メンテナンスを施せばよいと判断したからとのことでした。5年後には危険な状態になるが、2017年の段階では「イエローカード」といったところだったのです。
その後、撤去・新設を決定した今年の4月まで調査はしていないと思われます。ですから、何か改めて調査をして撤去の根拠になるような危険な状態を認識したわけではないのです。
ましてや、今年の3月議会の代表質問で公明党の鈴木真智子議員の質問への答弁として市長は以下のように思いを吐露しています。
「余り知られてないのが残念でならない。私が好きなところで。 実はきのう、少し時間つくって見てきました。本当にすばらしい場所だと思っています。あそこを、今おっしゃったように、平和の発信の場にしたい、文化の発信にしたいという思いは一緒ですので、ルートミュージアム構想の中の1つにぜひ加えていきたいというふうに思います。 軍港めぐりだけではなくて、どこかの時点で平和を訴える場面がなかったのかなとずっと探してきたところで、言っていただいた質問ではたと気がつきまして、不覚にも平和のモニュメントがあるということをすっかり忘れていまして。タワーマンションがないときは、一番高いものだった。上から平和を祈るという意味では、ルートミュージアム構想の中の1つの拠点として非常に大切なところだということがきのう行ってよくわかりました。おっしゃるとおりです。ありがとうございます。」
市長は「平和モニュメント」について何か方針をもつどころか、その存在じたいを忘れていたのです。質問されてはたと気が付いたと言っているのです。ですから、この時点では「平和モニュメント」について、撤去だとか改修だとか新設だとかは影も形もなかったのです。しかし、この答弁から、また、鈴木真智子議員の質問と提案によって、ルートミュージアム構想に中央公園の拠点化が盛り込まれたということがわかります。そして、驚くべきことにこの質問ー答弁は2月26日に行われているのですが、「平和モニュメント」の撤去・新設を4月には決定しているのですから、1ヶ月~2ヶ月の間に急激に話が進んだということです。あえて皮肉交じりに言わせてもらえば、存在じたいを忘れていたのに2か月余で存在じたいをなくしてしまうことを決めてしまったのです。なんというスピード感の重視でしょう!
しかも、「平和モニュメント」の作者ある彫刻家の故最上壽之氏のご遺族の了解は得られていないのです。
私はこういう市長のものごとの進め方に大いに違和感を覚えます。市は「平和モニュメント」が市民に危険だといいますが、私は市のやり方こそ、市民に対して危ないと思います。
ご遺族は「改修の可能性の検討」と「専門家の意見聴取」を意向として示されたといいます。
「改修の可能性の検討」については三社に調査委託し「現状の腐食状況」「改修等費用」も調査しています。この調査で市が撤去・新設の根拠とする内部の鉄骨の浸食状況等から補修による延命は困難との判断が出てくるのです。しかし、これは繰り返しになりますが、市が一番最初に撤去・新設を決定した4月よりも時間軸としては後になります。
そして、ご遺族の意向のもう一つである「専門家の意見聴取」として文化振興審議会委員6名、横須賀美術館美術評価委員会委員1名、横須賀美術館関係者2名の計9名によって「平和モニュメントに関する検討会」が開催されました。その中では非常に重要なことが指摘されています。
パブリックアートは公共の共通財産。撤去・保存については、所有者である市民の意見を聞くべき。美術作品は、壊して再設置では意味がない。平和を願う気持ちを記憶にとどめるために形にしたものである。姿を変えたとしても、市議会の核兵器廃絶に関する決議や核兵器廃絶・平和都市宣言が思い出されるようにしてほしい。
といったご意見がありました。
私はこういう検討会の有識者のご意見はしっかり反映されなければならないと思います。
そして、ご意見も重要なのですが、実はこの検討会の行われた時期に驚きを禁じ得ないのです。
この検討会開催は議会が始まった8月30日の2日前、8月28日でした。審査のあった都市整備分科会の1週間前です。市はご遺族に言われるまで、専門家のご意見を伺おうという姿勢がなかったということです。今年4月の撤去・新設に至る過程においても一切、専門家のご意見を伺っていなかったのでしょう。呆れるばかりです。「平和モニュメント」は単なる構造物、建築物ではなく美術作品、芸術作品なのですから、そうやすやすと撤去・新設と決定できるものではないはずです。
「市民の意見を聞くべき」というご指摘を無視するのでしょうか。このようなご意見が出たのですから、拙速に強引に議案として提出するのはいかがなものでしょうか。
しかも、見逃してはならないのはこの「平和モニュメント」は335万円余の市民の募金も入って建設されているという事実です。ですから、市民の意見は絶対に聴かなくてはならないと思います。市民に意見も聴かずに勝手に撤去・新設を決定するなど本来あってはならないと思います。
以上の点を市長との「総括質疑」で明らかにしたいと思ったのですが、叶わなかったので、この場で展開しました。
最後にもう1点。
市長は3月議会で鈴木真智子議員の質問に答える中で、「平和モニュメント」の存在にはたと気が付いた。それまで、不覚にも忘れていた。と言いました。しかし、実は、前年の12月議会で私自身が「平和モニュメント」を一般質問で登場させています。
以下、会議録からの引用です。
平和の発信基地として象徴的であり、忘れてならないのは深田台の中央公園にある平和のモニュメントです。多くの自治体に核兵器廃絶平和都市宣言のオブジェがありますが、本市のモニュメントは高台にそびえ、遠方からでも望めるメタリックキューブのボディです。この寡黙なシンボルは、雨の日も風の日も横須賀のまち並みを俯瞰し、市民の安寧を見守り続けています。私たち横須賀市民は、いま一度核兵器廃絶の思いをしっかりと受け継ぎ、平和の決意を固めることが必要と思いますが、市長はいかがお考えでしょうか、伺います。
さらには2018年3月議会でも私は「平和モニュメント」を一般質問で登場させています。
これもそのまま会議録を引用します。
本市は御承知のとおり、核兵器廃絶・平和都市宣言を行っています。深田台中央公園にある平和のモニュメントには、この宣言が刻まれています。1989年、平成元年5月23日に行われたこの宣言の中には、さきに行われた本市議会の核兵器廃絶の決議に呼応し、という言葉がうたわれています。このことから、本市の核兵器廃絶・平和都市宣言のきっかけをつくったのが横須賀市議会の決議であったということがわかります。
私が「平和モニュメント」の撤去・新設にこだわるのは、このようにずっと「平和モニュメント」に問題意識を持ってきたからです。
ここで、もう一つ疑問が生じます。
私は一般質問の中で鈴木真智子議員よりも2か月前、1年前に「平和モニュメント」を登場させていたのに、市長は私の質問では「平和モニュメント」を想起させることがなかったのだろうか。
本日、3度目の残念です。