大村洋子
大村洋子大村洋子

第40回市町村議会議員研修会in神戸 5/15~5/16

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1日目 記念講演

自然災害への備え

―事前復興背作と受援力を考えるー

講師 西堀喜久夫氏

愛知大学地域政策学部教授

1995年の阪神・淡路大震災以降鳥取県、北海道、新潟県、福岡県、東北3県、熊本県と大きな地震が頻繁に起きている。日本でも、世界でも地震の活動期に入っていると思われる。

災害の定義・・・自然災害は、自然と人間社会とのかかわりの中で起こることであり、自然の変動はあっても人間社会との関係がないところでは災害は起こらない。(そういう変動は災害とは言わない)

・東日本大震災などでも神社のある地域は災害を逃れたところは多い。(約75%)これは先人たちの知恵で、津波などが来ないところに神社を建て避難のシンボルにしたと言われる。近くには「教訓の碑」などもあり遠くではなく、近くの高いところに逃げろなどと書いてあるという。

・自然災害の被害者は社会的弱者、経済的弱者に集中。

・自然災害によって復旧・復興で一時的に建設業が活況になるように見えても、社会全体でみれば、損失となり経済力を弱めることになる。

・不確実性の高い自然災害対策のためにはなかなか予算をつけて計画するのは難しい。住民の合意形成も難しい。

・阪神・淡路大震災は国民の自発的な活動が行われ「ボランティア元年」と言われ、東日本大震災では広域で自発的活動が行われ「水平支援元年」と言われている。

・熊本県の地震は2度目が大きかったこともあり、多くの被災者が建物内ではなく「車中泊」を選択した。エコノミー症候群の問題も発生した。

・また、ペットのコーナーも設けられた。

事前復興計画・・・被災後に進める復興対策の手順や進め方を事前に講じておく。

・各自治体には総合計画があるので、それを土台にしていくとよい。

・地域自治のまちづくり協議会などで小学校地域レベルで地区防災計画としてつくようにするとよい。

地域強靭化計画・・・2013年12月の国土強靭化基本法がベース。国土強靭化というと公共事業推進ばかりが目立っていたが、(ナショナル・レジリエンス)という考え方で復元力、耐久力というニュアンスが強い。国から策定費用の補助金がでる。今まではハードウェア中心だったが、ソフトウェアについても考えていく。

【法の意図】

① 国民の生命、身体及び財産を保護し、並びに国民生活及び国民経済を守ることは、国の責任

② 脆弱性評価を行い、優先順位を決め、事前に的確な施策を講じること

③ 特に72時間以内の対応に人員、資源、資金を集中的に投入すること

【特徴】

① 脆弱性とリスクシナリオ

弱点を率直に出して、評価をし、最悪の場合どのようなことが起こるのかを想定する。

② 被害を最小にする減災という考えを強調している。今まではゼロか100だった。まずは災害を認めることから。

③ 72時間の対応を強調。人命を守ることが第一。地域の復元力をいかに高めていくかが課題。

・ハードだけでなく、住民の意識や行動が復元力に影響する。

・被災地では何を要求しているのか、メニューをもって何が欲しいか聞いて回る活動をしたところもあった。

・罹災証明を出すには職員の技術がいる。人的な対応力がモノを言う。市役所が壊れたらどうするか違う場所で市役所の機能を行う場合もある。

・内閣府が出しているガイドラインに沿うことが重要であり、そうしなければ補助金の対象とはならない。しかし、自らの地域の特徴をよく知って地域強靭化計画を作成することが大事。

・地域の避難所に都道府県の職員が来ても、顔を知らない。やはり市長村の職員が良い。

・地域強靭化計画はコンサルに依頼することもあるが、自分たちが直接携わってないと評価できない部分もある。

・経済活動の継続のためにBCPを作成することも重要。特に地域の中小企業のBCPはダメージを最小限にし、立ち上がり易くする。

【留意事項】

① 強靭化を損なう原因は何か。あらゆる側面から検討する。

② 時間管理的理念、長期的な視野に立つ。

③ ハード対策、ソフト対策両面から進める。

④ 非常時のみならず、平時にも有効活用される対策にする。

⑤ 地域の担い手が活動しやすい環境をつくる。

⑥ 障がい者、女性、こども、外国人、性的マイノリティへの配慮。

自治体の受援力を高める

受援力とは・・・支援を受け入れる体制構築の力量

・自治体はオールマイティである必要はない。自ら出来ることと出来ないことを明確化し、そのことを行政も住民も具体的に認識していることが大切。

・何が不足しているかが分かることは力量の評価へもつながる。

・出来ること、出来ないことを仕分けする能力を持つ。

「自前主義」水や食糧、テントを自分で用意して被災地に駆けつけ、一切被災地を頼りにしないこと。自衛隊などがそういう行動をする。

・鳥取県智頭町には被災時に受け入れをしてくれる事前加入の“疎開”保険がある。

・友好都市・姉妹都市の交流の中でお互いに助け合う。横の支援。水平支援。

感想

事前復興、地域強靭化計画、受援力といった発想や行動は、東日本大震災や阪神・淡路大震災の以前には考えもしなかったものだと思う。講師の先生は人間は自然に働きかけて発展してきたとおっしゃったが、自然は人間に襲いかかることもある。その自然に対して、人間は想像して、予測して対処する力を持っている。とくに出来ることと出来ないことを明確化し、出来ないことを他者にお願いする、そのようなことを前もって決めておくということが出来ることが素晴らしいと感じた。

 それと、頭では分かっていても、いざその時になると思い通りにはいかないこともあるということが分かった。東日本大震災における津波避難では昔から「津波てんでんこ」でとにかく自分のことだけ考えて逃げろというのが教訓になっているが、実際には御舅さんを助けに帰った「お嫁さん」の話が出た。助かっても、その後にその地域で後ろ指を指されながら生きることは出来ないという思いからだったという。いざという時の行動様式には心情も加味される。また、安否確認期は「災害ユートピア」と言ってみんなが不幸な状態を共有し合うので、助け合いのあたたかいコミュニティが形成される。しかし、その後仮設住宅へ移動する段になるとコミュニティの分解が生じ、ひとり暮らしの高齢者などの孤独死が表面化したという。ことほど左様に人が生き続けるというのは難しいことだと考えさせられる。